ダライラマ14世来日と野田外交

民主党の長島首相補佐官が、来日していたダライ・ラマ14世と会談したことについて、中国外務省から日本政府に対する抗議があった。
「両国関係の大局に立ち、日本側に問題を慎重かつ適切に処理することを要求する。」
「要求」などという尊大な言葉を意図的に選ぶ中国の傲慢さには辟易とするが、これが中国という国柄であり、中国共産党の国際関係におけるスタンスである。
自国、もしくは自党に不利益な言動があったときは、断固強い態度と言葉で批判することで、中国、中共に対する反旗は許さないという頑なな姿勢を示す。
ある意味徹底しているのだ。
かたや永田町の官邸では、藤村官房長官が長島氏を呼び、「ダメじゃん!」と注意する。
「ダライラマ14世の入国時に、政治的行動や政府関係者との接触はしないというのが今日までの通例だ」と言う理由だ。
長島氏が「分かりました」と応じ、この件は一応の収束を見た。
長島氏への注意は、ある種の儀式であり、中国に対して「ちゃんと注意しましたよ」という行動を見せたかったというのが、官邸の底意ではなかったのか。
年末に訪中を控えた今、日中両国とも、不要な摩擦やわだかまりを嫌うはずで、低姿勢外交を信条とする(?)「野田首相の中国に対するメッセージ」だと取りたくなるような一件である。
中国共産党は、「ひとつの中国」という国策プロパガンダを殊更強調し、台湾や「略奪して奪った」西方の自治区に対する外からの意見を、内政干渉と退ける。
それらの土地で、いかなる傍若無人な振る舞いを見せようとも、共産党が報道を規制しているためになかなか実態が外に出ることはない。
しかし、いくらなんでも、チベット僧の焼身自殺が急増している情勢について、外交筋から官邸に情報が伝わっていないなどとは思えない。
ならば、ダライラマ14世の来日と政府要職の接触は、日本が「人権を尊重する国家である」ことを主張する、またとない機会だったのではないか。
そしてAPECや訪中の機会に、「中国との戦略的互恵関係は重要だが、人権侵害を看過することはできない。」と、胸を張って堂々と言えば良かったのだ。
教科書問題や靖国参拝問題などで、日本に対する内政干渉を繰り返す中国に、内政干渉の定義など語る資格があるとも思えないが、実効支配とは、その正統性とは別の次元で、支配した側が圧倒的なイニシアチブを取ることなのだ。
明らかな日本の領土でありながら、日韓で領有権がぶつかる竹島を事実上支配する韓国が、コンサートだの管理事務所建設だの、好き放題できるのが、実効支配の現実だ。
ただ、いくら実効支配を敷いている側の立場はあろうとも、人権侵害など別次元の問題を提起することは可能ははずだ。
鳩菅と、対中弱腰外交が続いた民主党政権において、「野田は手強いぞ」と中国に知らしめるよい機会だったのに、勿体ない限りだ。
お前に外交の何がわかる!?と怒鳴られそうだが、民主党政権の対中外交を見ていると、意見せずにはいられないのだ。
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