日本政府は「中共を刺激しない」というアプローチを何度失敗したら学ぶのか

岸田首相による内閣改造で、評価できる数少ない点のひとつはリン外相の交代で、もうひとつが木原稔氏の防衛相登用だ。上川新外相の実力はある程度の時間をおいて評価されるべきだが、どうも岸田氏は、外交の主役は自分だと思っているらしい。安倍内閣で4年8カ月の長い間、外相を務めた岸田氏は、政権の外交に対するアプローチに関し、周囲にこう語っていたという。
「外交は官邸主導でやる。安倍外交だってそうだった。外交は総理大臣がメッセージを出していくものだ」
安倍総理は唯一無二の外交力で国際社会をリードしたが、安倍政権の最優先事項は経済だった。強い経済なくして安全保障もないという基本的考え方が根底にあったと聞くが、岸田政権が経済に関して明確で効果的なメッセージを出し、強い経済をリードする首相の姿は、今もってなしである。
さてその外交を重視する岸田首相が、国連総会で演説し、核なき世界という理想論を展開したことは既報の通りだが、福島の処理水を汚染水と位置づけ、日本の海産物に対する禁輸措置をとった中共の批判は避けたという。
首相、処理水放出触れず 国連演説、中国刺激を回避(共同)
【ニューヨーク共同】岸田文雄首相は19日(日本時間20日)、米ニューヨークで国連総会の一般討論演説を行った。ウクライナに侵攻するロシアについて「国際法、法の支配をじゅうりんしている」と非難。国連の機能強化に向け安全保障理事会の改革を訴えた。東京電力福島第1原発処理水の海洋放出には触れなかった。政府関係者によると、中国による日本産水産物の輸入停止撤廃に向け、中国を過度に刺激するべきでないと判断した。(以下略)
「中共を過度に刺激するべきでないと判断した」というが、「そのことには触れない」という密約が、中共とのあいだで事前に結ばれていたのではないかという疑念さえ湧く。これではリン外相を交代させた意味はなく、「岸田が外交を主導しても同じ」という結論になる。この「相手国を刺激しない」という外交手法は、戦後外交において、「敵を作らないいい子でいたい」という手垢のついた外交アプローチである。だが、国家の意思を示すことを遠慮し、「刺激しない」ことによって他国との外交関係がどうなるかは、中共や南鮮の対日外交を見れば明らかだ。相手はつけあがるのだ。
中共を刺激しないことで何が得られるのか、また何を失うのかは、中共が態度で示している。
中国 掘削装置を尖閣周辺にえい航へ 日中中間線を大きく越える海域…政府関係者が危機感「外交問題に発展するだろう」(日テレ)
中国当局が日本時間23日までに天然ガスなどを掘削する作業装置を沖縄県尖閣諸島の周辺海域に運ぶことがわかりました。一帯は「日中中間線」から日本側に大きく入り込んだ海域にあたり、日本政府関係者は危機感を示しています。
中国の海事局は日本時間の21日午後6時から天然ガスなどを掘削する作業装置「勘探8号」を船でえい航して東シナ海の目標海域に運ぶと発表しました。指定された目標海域は沖縄県尖閣諸島の大正島から北東におよそ140キロの海域で、23日午後6時までに到達する予定を示しています。
この海域は日中中間線からも大きく日本側に入り込んだ場所にあたります。日中中間線は日本と中国との間に位置していて、日本政府はこのラインを基にEEZの境界を定めるべきとの立場です。
これに対し、中国は今回の目標海域を含む沖縄トラフまでを自国の排他的経済水域などと一方的に主張しています。中国はこれまでも日中中間線の付近で一方的にガス田などを開発、日本政府も中止を求めてきましたが、今回は中国側がさらに強硬な措置に打って出てきたかたちです。
日本政府関係者は「従来に比べてはるかに大胆だ。外交問題に発展するだろう」と危機感をあらわにしています。
中国政府は先月始まった福島第一原発の処理水放出を受けて日本政府への批判を強めてきましたが、実際に作業装置が尖閣諸島周辺に設置された場合には、緊張がさらに高まるのは必至です。
結論から言うと、この掘削装置の航行情報は後に取り消された。だが、こういった策動はボクシングでいえば見せかけのジャブのようなものだ。他国の領海まで自分のものと言い張る中共は、計画をいったんは停止したが、近い将来にまた発動すると思われる。
中共の東シナ海ガス田問題は、2004年にまで遡る。日中のEEZ(日中中間線)にまたがるガス田の開発を中共が勝手に始め、中川昭一経産相は日本の権益を守るため、帝国石油に試掘権を付与し、ガス田に日本名を付け、公文書などでも使用を始めた。これはひとつの国家意思の表明だ。ところが小泉純一郎首相は中川大臣を農水省に横滑りさせ、“中共を刺激しない”よう、親中派の二階俊博を経産相に据え、対立を避け、話し合いで解決しようとした。その後約30年が経ち、このザマである。
この掘削装置の高校計画が再び発動されたとき、日本政府はどう出るのか。米国は自国領空に侵入した中共の気球を撃墜したが、EEZ内にミサイルを着弾させられてもNSCを開かなかった岸田首相に、同じような胆力は望むべくもない。しかし少なくとも、中共を刺激しないことで外交問題を矮小化することがあってはならない。これで「遺憾砲」のみなら、さっさと官邸を去ってもらいたい。
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