岸田首相のウクライナ訪問 ~ 官邸の情報管理と報道のモラルを再考せよ

今日くらい「会社に行きたくない」と感じる日はない。それほど、昨日のワールドベースボールクラシック(WBC)準決勝、日本対メキシコ戦の終わり方は劇的で、試合終了後の高揚感と、その後に押し寄せた疲労感はハンパなかった。我が侍JAPANの絶対に諦めない姿勢は画面からでもひしひしと伝わり、観戦している側も、苦しい状況にあっても期待を捨てずに応援することができる。今日のアメリカとの決勝戦も、その姿勢を貫いて、勝利をもぎ取ってほしい。
その侍JAPANの試合のクライマックスの場面で出てきた「岸田首相、ウクライナを電撃訪問」という臨時ニュース。
試合に集中していて、状況が呑み込めなかったが、「きっと極秘にキーウに到着したところで報道が出たのだろう」と勝手に思っていたが、この時点では到着前。なんとNNNの報道カメラに、経由地のポーランドで列車に乗り込む姿を撮られたことを、後で知った。
このニュースを先駆けたNNNは、報道の解説で「極秘訪問にむけた1つめのポイントは「情報管理の徹底」でした」としているが、この映像を抜かれる時点で情報管理の杜撰さを自ら公表したようなものだ。NNNによれば、岸田氏は、移動は政府専用機ではなく別のチャーター機極秘でを利用し、「同行記者団やスタッフの多くをインドに残し、限られたスタッフだけで具体的には秋葉国家安全保障局長や外務省の山田外務審議官、総理秘書官など数人と電撃訪問を実行した形」だという。この「インドに残した多くの記者団」のなかにNNNが含まれていなかったことも考えられるが、もしそうであっても、危機管理の観点から報道を控えるのが常識だ。岸田氏が個人的に懇意にしているナベツネの配下にあるNNNを優遇し、スクープという恩を売ったとしても、危機管理という問題の本質は変わらない。
ジャーナリストの峯村健司氏は、「これほどオープンな電撃極秘訪問は前代未聞です」とツイートしていたが、前回のウクライナ訪問がポシャった際に「ザル」と言われた情報管理は、やっぱりザルのままだったようだ。官邸の情報管理も問題だが、日本のメディアのモラルも問題視されるべきではないか。首相の動向を取材し、報じるのは、メディアの仕事の一部であり、それ自体は非難されない。だが、その報道によって人命をも危険にさらすようなことになる場合、報道そのものが害悪になる。はっきりいって、そういう報道など、メディアの自己満足に過ぎず、なんでもいいから他社より先んじてという報道合戦のみが価値として認識されているなら、その価値観は変えるべきではないか。
米国のやることがすべてベストであるとは言わないけれど、バイデン大統領のウクライナ訪問時、同行を許されたのは、ウォールストリート・ジャーナルの記者とAP通信のカメラマンの2人だけだったという。こういう政府とメディアの関係構築が必要だ。他社には報道管制が敷かれ、皆それを守ったのだろうと思う。
首相によるウクライナ訪問には意義がある。だが、やり方のまずさ、情報管理のダメさ加減については、根本的に考え直してもらう必要がある。
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