気球を飛ばされて会談をキャンセルする米国と、領海侵入されても会談に前のめりな日本

日本政府がよく上げる観測気球というものには慣れっこになったけれど、リアルな観測気球というのは初めて見た気がする。米国防総省が米国本土の上空で中共のものとみられる観測気球を発見し追跡、監視を行っていると発表したのが2日のこと。地上の安全を考慮し撃墜は見送ったが、監視しているとの発表だった。米軍の核兵器施設がある西部モンタナ州の上空も飛行しており、情報収集が目的だと分析している。
この件につき、中共側は「気象などを研究する中国の民間の飛行船」だとし、「不可抗力によってアメリカに迷い込んだことを遺憾に思う」と発表した。だが、こんな弁明を文字通りに理解する者なの希少価値だろう。米国防総省の報道官気はすかさず、「気球本体にぶら下がっている部分に偵察用の機器が搭載されている」との分析を示し、中共の弁明を一蹴した。気象観測が目的なら地上の偵察をする機器は必要ないという、わかりやすいツッコミだ。そもそも国家動員法がある中共を相手ににした際には、その主体が民間を装っていても、北京の名を受けた仕事と疑ってかかるべきなのだ。
さて、この件を受けての米国政府の対応は毅然としている。ブリンケン国務長官は中共に対し、「無責任な行動であり、明確な主権の侵害と国際法の違反にあたる」と批判したうえで、予定されていた中共訪問を延期すると伝えた。対話のチャンネルは閉じないとしているが、このような無作法をされた状況で自らが訪中することの不利益を考慮した判断だろう。外交が駆け引きであるなら、イニシアティブは我が方が持つというメッセージでもある。
そういう米国の対応について、日本政府と比較してしまうのは、ある種自然なことだろう。2日、リン外相は中共の秦剛(シン・ゴウ)外交部長と初の電話会談を開いた。そして、3日の外相会見で、中共側からリン外相の訪中について招待があり、具体的な時期を調整してまいりたいと答えている。
【読売新聞 阿部記者】今の質問との関連になりますが、昨夜のその電話会談は、どちら側から呼びかけたのか、ということと、水際対策について意見交換しましたでしょうか、というのもお聞かせください。というのも、中国側は、日本人向けの渡航ビザを発給されたりしましたけど、日本側は、昨年12月以降、検査強化するなどの対策続いたままですけれども、それについて、今後、どう対応していくかについても、改めてお聞かせください。
【林外務大臣】まず、どちらから呼びかけたかということですが、これは秦剛外交部長の着任も踏まえて、両外相の会談を行う必要性について、互いに一致していたという中で、具体的に調整を行ったものでございます。
また、水際措置ですが、中国側から、日本側の水際対策緩和について言及がありまして、私(林大臣)からは、我が方の立場について説明をいたしました。
我が国としては、水際対策のこの臨時的な措置については、当面、現在の措置を行いながら、中国の感染状況等を見つつ、引き続き、柔軟に対応してまいりたいと思っております。
秦剛の外交部長就任が決まったのは昨年の暮れのことだ。その後、「両外相の会談の必要性について、互いに一致したうえで調整している」というのだが、「会談しましょう」というそのさなかに中共は尖閣沖の領海侵入を繰り返している。いわば、領海侵入が常態化し、前提となったうえでの外相会談なのだ。米国の対応とはまるで違う。尖閣沖の領海侵入は、気球のような「民間の調査」ではない。海警局という公的な組織の船を含むもので、事の重大さは気球レベルではない。
もうこの時点で駆け引きに負けていると言わざるを得ない。むしろ、駆け引きしようとしている節すら感じられない。対話のチャンネルはオープンでも構わない。しかし少なくとも、相手国に対し、「会談する環境を整えるよう、努力しろ」という要求はするべきでないのか。
安倍政権においては、外交を安倍総理自身がやっていたから、心配なかった。今の政権の外交には、心配どころか、絶望に近いものを感じる。
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