麻生副総理の「ナチスの手口学んだら」発言の真意

一昨日29日、国家基本問題研究所(国基研)の月例研究会に参加した。国基研の会員になって以来、月例研究会に参加するのは実は初めてで、28日日曜日に参加した青山繁晴氏の独立講演会に続き、非常に有意義な二日間だった。
国基研は櫻井よしこ氏が主宰するシンクタンクで、今月の月例は国基研から櫻井氏、田久保忠衛杏林大学名誉教授、遠藤浩一拓殖大学大学院教授の3名が登壇。ゲストがまた豪華で、麻生太郎副総理、西村眞悟衆議院議員、笠浩史両衆議院議員の3名だった。戦後政治を勉強したことがある人なら、麻生副総理と西村眞悟氏が隣に座る場面を、よだれが垂れる思いで見たに違いない。麻生氏の祖父、吉田茂氏と、西村眞悟氏の祖父、西村栄一氏は、あの有名な“バカヤロー解散”の当事者である。60年の歳月を経て、その孫ふたりが、共に衆議院議員として同じ舞台で語るのだ。しかも、ご両名は中身がぎゅっと詰まった政治家である。どこかのバカ政党が二世議員はダメなどと吹聴していたが、「中身は関係ないのか?」と問いたくもなる。

私は西村眞悟氏の個人的な大ファンだが、麻生副総理の語りは西村氏にも増して絶妙である。人を惹きつける不思議な力があるのだ。饒舌で、力説すべきところはトーンが強まるが、その節々にジョークを交える。言葉で人を魅了する人はこうなんだと、改めて感心してしまった。
ところが一日経った昨日30日、この国基研での発言がメディアを賑わすこととなった。下記は、読売新聞のベタ記事だが、言葉尻をつかまえるとは、まさにこのことだ。
ナチスの手口学んだら…憲法改正で麻生氏講演 (読売新聞電子版)
麻生副総理は29日、都内で開かれた講演会で憲法改正について、「狂騒、狂乱の中で決めてほしくない。落ち着いた世論の上に成し遂げるべきものだ」と述べた。
その上で、ドイツでかつて、最も民主的と言われたワイマール憲法下でヒトラー政権が誕生したことを挙げ、「ワイマール憲法もいつの間にかナチス憲法に変わっていた。あの手口を学んだらどうか。(国民が)騒がないで、納得して変わっている。喧騒(けんそう)の中で決めないでほしい」と語った。
実際に発言を現場で聞いていた者として、前後の文脈を説明しよう。
まず、麻生副総理が力説したのは、記事にある通り、憲法改正は「落ち着いた世論の上に成し遂げるべきものだ」ということである。戦前、鬼畜米英の大合唱とともに、全体主義を巻き起こした世論のなかで戦争という重大な決定が行われた。まさしく、冷静さを著しく欠いた状況だった。麻生氏が主張したのは、この“喧騒の中で何かを決めるのことの危うさ”なのだ。
ワイマール憲法がナチス政権下で変わったことを引き合いに出し、「あの手口を学んだらどうか」と述べたのは、皮肉交じりの単なる比喩であり、ジョークである。この言葉をまともに捉えて、「いかがなものか」風の論評を発するメディアの姿勢には、ある種の悪意を感じる。副総理が言われたのは、“冷静や喧騒と、重大政策決定の関係性”であり、“それにかかわるメディアの責任”なのだと、私は解釈した。戦前、大衆の喧騒を「鬼畜米英!」と煽ったのはメディアであり、政治家ではない。メディアはしょうもない記事を書く前に、自分たちの立ち位置を見直すべきだ。
聯合ニュースは、この麻生発言に対する韓国政府の不快感を伝えている。
韓国外交部の趙泰永(チョ・テヨン)報道官は30日の定例会見で、「(麻生氏の)発言が多くの人を傷付けるのは明らかだ」と非難。ナチス政権に対する言及が今日の良識ある人にどのような意味があるか、日本帝国主義の侵略の被害を受けた周辺国の国民にどのように映るのかは明確だとした。
ばかばかしい記事で、一顧だに値しないが、マッチポンプ役の日本のメディアの存在があるから、こういう記事がエネルギーを得るのだ。
麻生副総理は、スピーチの中でもっと重要なことを語っておられた。歴史認識の違いはあって当たり前だということについての説明は、まさしく目から鱗だった。(後日改めて書こうと思う。)マスコミはそれもスルーである。文脈も提示しないまま、言葉尻だけを摘みあげて書く傍ら、重要かつ本質的な部分は書かない。マスコミの成果物は、ワイドショー的、もしくは夕刊タブロイド紙のレベルである。こういうセッションに参加し、その後の報道を確認すれば、実際の発言と報道ではかなりの乖離があることに気付く。
壇上にはあがらなかったが、自民党の西川京子議員、元民社党委員長の塚本三郎氏も来場していた。塚本氏の御顔を拝見するのは数十年ぶりなような気がする。西川氏は「マスコミが反権力であることは構わないが、最大の問題は、日本のマスコミの多くが反権力ではなく“反国家”だということだ」と語っておられた。まさに正論である。
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